★吉祥寺石日記★


23rd.Dec.2000

 会場はなんだかそわそわしている。これからどんなことが起こるのか、そして誰が登場するのか。2部構成、4時間以上にわたるだろうこれから始まるライブを前に何か急かされているような気持ちになる。会場にいる人達の「わくわく」と「どきどき」が静かな緊張感と共に会場を埋め尽くしている。

 午後5時を少し過ぎた頃、薄暗いステージにメンバーが現れる。そして杉さんがマイクの前に立つ。きらきら光るシャツにビロードのスーツ。ドラムのカウントから1曲目のイントロ。「何、何?」♪都会の夜 壊れたレーダー♪タイトルを思い出すまでに数秒かかるほど予想もつかなかった曲「Panic in Submarine」。こんな曲から始まってしまうなんて。これだから杉さんのソロライブは何が起こるか分からない。ワンコーラスが終わって間奏に入ったところでメンバー紹介。このメンバーでやるのは2回目だけどそんな感じをさせない。「どうもこんにちは、アンド、メリークリスマス!!あともうちょっとで20世紀も終りだけど20世紀の力を全部振り絞ってやるつもりです。最後までゆっくり楽しんでください。」そしてピアノのイントロ。「え?え?」あちらこちらから悲鳴のような声が上がる。まさか、まさか…。「B Side!!」杉さんが叫ぶ。この曲をやってくれるなんて信じられない。杉さんの曲の中でも特別な曲というとこの曲が一番に上がるほどのこの曲「On The B Side」レコードからCDに時代の流れは移り変わっているけれどあの時代に大切に残っているこの曲。私にとっても特別な思い入れの多い曲。この曲を今、杉さんが歌っている。なんだか信じられなくて頭の中が真っ白になって来る。何がこれから起こるんだろう…。間髪入れずに「Melting World」へ。会場もどんどんヒートアップしてくる。

「21世紀もそこまで来てますが心の準備は出来てますか?」21世紀と改めて言われても…なんだかさらに焦ってしまう。「子供の頃思ってたのは21世紀には一人一人が電話を持ってね…これは叶ってるけどもう一つ思ってたのは朝、パジャマのままカプセルに入って学校まで行けるって言うの。」なんだか杉さんらしくて思わず微笑んでしまう。「じゃ、明るめの曲を…」といって「Catch Your Way」。とても特別だったこの曲が少しづつ私の中の日常へと変わっていっている。

 MCをしながらチューニングをして「Romancing Story」。そしてピアノのイントロ「Backstage Dreamer」へ。なんだか足をばたつかせちゃうほど嬉しい。あちこちからも歓声が上がる。途中からジャズっぽくなり杉さんも指でカウントを取る。それがとても素敵。「そういうわけでソロアルバムがもうすぐ完成します。」会場から大きな大きな拍手。「昔から多重録音ができたらいいな…って感じでティーンエイジャーの時に思ってた『俺にやらせろ』っていう自分への約束を果たそうかなって思ってベース弾いたり、ギター弾いたりしてます。」自分への約束をちゃんと果たすって言うことが本当に難しくて、それができない私にとってなんだか大きな大きな励ましのように思えてくる。「じゃ、新曲やっちゃおうかな」と言って「So Fine, So Good」を。「人間の気持ちっていろいろあるなじゃいですか、それを味で例えたらどんな風になるかなって思って。甘いとか、辛いとかあるけど大事なのは美味しいってことで、いろいろいろんな味があるから美味しいんじゃないかって…そんな事を曲にしました。」ミディアムテンポからゴージャスなアレンジへと。♪辛い日があって嬉しい日があってとにかく君は今生きてる…♪なんだか大丈夫、大丈夫、それでいいよって明るく歌に込めた杉さんのメッセージが伝わってくる。自分に自信がなくて、落ちこんだり、悲しくなったり。だけどこんな風にストレートに励ましてくれるならこれからどんなことが起こっても大丈夫、そんな気さえしてくる。そして続いて「My Little World」へ。この曲も後ろに立って見守ってくれているような曲だもの、とても強い気持ちがみなぎってくる。

 「レコードとは違う感じでやってみようということで前回もやったんですけど忘れないうちにもう1回やります。」といって「恋するQuest」を。アコースティックでジャズっぽくてとても好きなアレンジ。私の中で主人公は可愛い女の子だったけどこのアレンジで聴くとなんだかCuteな女の人のイメージに思えてしまう。

「アルバムねー今回自分で言うのも何ですが濃いんですよー。控えめに言って大自信作!」大きな大きな拍手が。さらに期待は膨らむ。「ちょっと西部っぽい曲だけど…」といって「I've got a dream」を。杉さんのギターと嶋田さんのピアノがラグタイムっぽい感じ。詩が本当に杉さんらしくて前向きでうれしくなる。続いてお友達のHABUさんのお子さんのために書いたという曲を。「その子が大きくなってその子にプロポーズをする人の気持ちになって作りました」「君がいるから」。なんだかホントにホントに優しくて今まで杉さんの「お兄さん」的な部分がもっともっと大きくなって父親のようなそんなスケールの大きな気持ちに守られている、そんな満たされた気持ちで一杯になる。やっぱり杉さんの歌に私は頼って生きていくんだろうな。そして「ヴィーナス」へ。もう胸が一杯に。余韻もそのままにメンバー紹介へ。「大切なパートナー…といっても結婚してるわけじゃないですよ(笑)キーボード嶋田陽一!」嶋田さんはいつもの大柄な模様のシャツ。「ギターのケースケくんはロック小僧なんだけど性格のいいロック小僧。私がドラクエで困ってると何時であろうと教えてくれる…」「まかせろ!」「ギター山本圭右!」今日のケースケさんはホントにしなやかなギターを聴かせてくれている。「この明るさが私をこうのけぞらせてくれる…ベース藤田哲也!」藤田さんは本当にどんな時でも楽しそうにプレイしていてこちらまで微笑んでしまう。「ドラムスは日本にこの人あり…っていう…島村英二!」島村さんのドラムはホントにどんな場所にいても強く響いてくる。

「太陽が知っている」へ。Monkey Forest Bandの曲だけどやはりこの曲は杉さんの中で大切な「ごきげん」なテーマなのかもしれない。続いて赤ちゃんの鳴き声とともに「プレデアス星への招待状」。そして間髪入れずに「Don't Stop The Music」へ。会場からはまた悲鳴のような声が。会場全体が揺れている気がする。♪すり切れた愛の歌をどうか止めないでおくれ…♪その勢いそのままにファンファーレのようなイントロへ。みんなの腕が上がる。「Starship」だ。どんなにこの曲をライブで聴きたかっただろう。なんだかここにいてこの曲を聴けることがとても幸せな気持ちで一杯になる。待っててよかった…。やっとやってきた「Starship」…。「どうもありがとー!」そう言ってステージを去る杉さん。なんだか嬉しくって嬉しくって…そんな気持ちで心の中が満たされている。

 アンコールの声に促されて杉さんが再び登場。ジャケットを脱いでキラキラ光るシャツがまぶしいくらい。「どうもありがとうございます!今日はいっぱいドジしちゃって緊張したぁ〜」杉さんが照れたような顔で微笑む。なんだかそれが客席のこちらまで伝わって微笑が広がって行く。「じゃこの辺でクリスマスソングを行ってみたいと思いまーす。」「くつ下の中の僕」を。たくさんの贈り物をもう十分もらった。♪だったららだったららだったららら〜♪みんなが声を合わせて歌っている。会場が歌に合わせて大きく揺れている。「と言うわけで…第一部最後の曲となってしまいました…」会場からは「えー」という声。「そんなこと言わないでよ、まだまだいっぱいでてくるから。」そうだ、まだまだこれからどんなことが起こるか想像もつかない二部が待っている。「ホントにみなさんは8年間もソロアルバム出さないのによく付き合ってくれました。ほんっとにどうもありがとう!8年分のみんなからもらった元気とかパワーとかエネルギーとかそれから考えとかも…どこが自分のいいとこなのか意外とわかんないんだよね、8年間みなさんがこんなとこがいいとかこんなとこがダメとか言ってくれて分かって来たような気がします。ホントにどうもありがとう。」会場から大きな大きな拍手。「しばしのお別れの前にこの曲を…」と言って「君は天使じゃない」を。優しい優しいピアノのイントロがキラキラ光って落ちてくる。もしかしたらここに天使はいるんじゃないかって思えるほど美しい空間がここにある。「どうもありがとう…また数分後にお会いしましょう…」と言ってステージを去る。なんだかライブが終ってもまだあるなんて贅沢で申し訳ない。こんな素敵な時間をもらったのに…。

 15分の休憩の後、杉さんが再びステージに現れる。今度はうってかわってリラックスした雰囲気。サンタクロースの服を着て椅子に座る。「えー、なんだかサラリーマンの宴会みたいですけど…」と照れ笑い。会場から手渡されたサンタの帽子をかぶると会場からは「かわいぃー」の声にさらに照れ笑い。「このかっこでやるには全くふさわしくないバンドです」と言いながらMonkey Forest Bandの紹介。「第二部は打ち上げって事ですので無礼講で…」「いやぁ〜よかったですねー、ソロライブ!パッションを感じましたねー」「おっパッションと言えば!」「パッションと言えば!」「パッションマッサージ!」おいおいってこっちが突っ込み入れちゃ入たくなるようないつもの松尾さんとのトークも冴え渡ってる(笑)いつのまにか風祭さんと「どうなってるの?」の「浮気の言い訳」話へと。好きですねーこの番組(笑)「いつまでもしゃべっててもしょうがないのでやりましょうか?」と言いながら「Hideaway」を。一瞬にしてバリのムードへ。「テレマカシ」と松尾さんがつぶやく。続いて「Soul Vacation」へ。この日にこの曲が聴けるなんて。なんだか嬉しくて嬉しくて思わずにこにこしてしまう。ああ、このままずっとこの時間が続けばいいのに。♪これから君はもうどこにも帰らなくていいんだよ♪「そう言えば昨日ギター持ってユニクロに買い物に行ってたら偶然松尾さんがインストアやってて…」と昨日のインストアのゲストに出た事を。「じゃ次は風祭くんのオールウェイズ時代の曲で」「Sailing Away」を。「このバンドはバリに行った時に即席で作ったんですけどそんな感じしませんよね」ということからバリの話へと。「バリで松尾さんに『松尾さん、ここのケーキ食べた事あります?』って聞いたら『No!』って言われちゃって…後から考えるとバリって物売りが多いからそれ断る癖がついてたのかな」「そうかもしれないですね(笑)」「自転車に乗っていこう」を。その後、渡辺かおるちゃんの登場。「性格が男っぽいんでかっこだけでも女らしくと思って…」とセクシーな茶色のタンクトップに黒のストレッチパンツ。会場から「おぉー」という声。そして「Perfect」を。「この前新生渡辺かおるバンドっていうのが出来てちょうどそのメンバーがいるので1曲やってもらおうかなぁ。じゃ渡辺かおるオンステージ!」と杉さんたちは退場してかおるちゃんが「One Boy」を。カバー曲なんだけどかっこいいアレンジでまた全然違った曲のようでした♪

 杉さんがサンタのジャケットを脱ぎ再びステージに現れる「では私の最近の重要なパートナー」と言って須藤薫ちゃんの登場。薫ちゃんは緑のワンピースというちょっとクリスマスっぽい雰囲気。「さっき、抽選でマウスパッドがあたるっていうくじ引きがあったんですけど、また勘違いしてたんですよね」「ねぇ、それはいらないなーって思って、マウスパッドなんてねぇ、ボクサーが…」「それはマウスピース(笑)」「そんなの当って嬉しい人がいるんだーって、歯ぎしりする人がいるのかなーと思って…」「かましてくれますよねぇ…」…(笑)…杉さんのギター1本で「I wish」を。この時期に聴くこの歌はホントにHolyな気持ちで一杯になる。薫ちゃんが女神さまみたいに見えちゃうんですよねぇ。「Chili Dogsは今日は仕事の人が多いんだけど谷口君が来てくれてます」と言って谷口さんの登場。「みんなのってるかい?」会場から「いえぇーい!」の声。「関西でやった時凄かったんだよね、あおっちゃってあおっちゃって(笑)」「こんな人だとは思ってませんでした。まだまだみんなのこと分かってないなーって(笑)」そうですねー、また関西でやってください!あおってください!(笑)そして再びパーカッションの里ちゃんが登場。嶋田さんも登場して「このメンバーでこの曲をやるのをやるのは初めてなんだけど…」「クリスマスのウェディング」を。なんだか大好きな曲をクリスマス前に聴けるなんて。嬉しくて嬉しくて泣きそうになったけど笑ってると心の中にきらきらとしたものがはじけた。♪教会の時計も今夜はストップ♪の所でライトが一瞬消えて会場がしんとする。なんだかとても厳かな気持ち。「ここでもう1曲、クリスマスの曲を…。薫ちゃん、言い残した事はない?」「予は満足じゃ」(笑)「明日も実はあるんだよね、平塚で…行く?」「行けたら…」とまるで他人事のような薫ちゃん(笑)「明日はたにやんとしみちゃんが来てくれるんだよね」「あ、じゃあ行こうかな?」なんて薫ちゃーん!(笑)そしてプレスリーのカバーである「Blue Christmas」を。嬉しいなー。今回は16日にあった薫ちゃんとのライブに行けなかったから聴けなかったこの曲を聴かせてもらえるなんて。薫ちゃんも何かが降りてるみたいに気持ちよさそう。こっちまで嬉しくなる。

 「それではここで私のライフワークのメンバーを読んでみたいと思います、BOX!!」会場からは悲鳴のような声が。みんなあの頃のBOXスーツを着ている。あちこちから「かっこいぃー」と声が上がる。「そしてギター田上正和!」と紹介されると一層歓声は大きくなる。田上さんがステージにいる。どんなに待ち焦がれていたか、もう見れないと思っていた田上さんのいるBOXが目の前にある。杉さんもBOXジャケットに袖を通し、田上さんがサングラスをかけるともうそこはモノクロのフィルムが回っているようだ。客席の歓声は止まらない。あちこちからどよめきがあがったままだ。「まつおさーん」客席から声が上がる。「Noって言われたらどうするの?」なんて杉さんにからかわれたりして。なんだかみんなのそわそわした感じが会場一杯になる。「こいちゃん、よくBOXスーツもってたよね、これは捨てられないよねーでもなかなかよそでは着れないよね(笑)」なんてチューニングを待ちながら松尾さんとのトークが続く。「やりましょうかね…」と言ったとたんその場の空気が変わる。ドラムのカウントから「What Time?」へ。会場全体が揺れている。跳ねて、飛んで悲鳴のような歓声。頭が真っ白になる。「Good Evening, Everybody!」松尾さんの声と共に「Temptation Girl」へ。またまた揺れる。♪彼女はTemptation Girl〜♪の杉さんのちゅちゅちゅちゅ…が可愛くて一緒に真似てみたり。終わってもまた悲鳴。あー、なんだかどきどきする。怒涛のように「Train to the heaven」へ。田上さんのギターがストレートに響いてくる。杉さんも嬉しくて嬉しくて仕方がない感じ。前にどんどん出てくる。「久しぶりですねー」ああ、ここで起こってる事は夢じゃないんだろうか…そんな事すら思ってしまう。「OK,もうちょっとやります『風のBad Girl』!」昨日のインストでもこの曲をやったけどやっぱりこのメンバーでやると別の曲のよう。「どうもありがとうございます。こうやってあの時とおんなじようにやってますが、みんな変わりませんねー」ああ、うれしいなぁ。田上さんはまたチューニングをしている。「マ坊さん中心に動いてますから…(笑)私たちはしもべですから(笑)…OK?じゃ、もちょっとだけやります、『Jouney to your heart』!」ああ、このまま時間が止まってしまえばいいのに。手拍子もちゃんと合っている。みんなとこの曲を聴くのは初めてなのに、不思議。音楽で、BOXで、遠い昔から繋がっていたんだ。本当に本当にたたみかけるように田上さんのギターのイントロ「ヒットメーカーの悲劇」へ。なんだか頭がおかしくなっちゃいそうなほどみんな揺れている。田上さんのギターソロに釘付け。ずっとずっと終って欲しくないギターソロ。「どうもありがとう!」まだ会場は余韻に包まれている。辺りを見まわすとみんなキラキラした顔。みんなホントにBOXが好きなんだなぁ。

 止まないアンコールに促されて杉さんが登場する。「ホントにどうもありがとうございますー」そう言って一人づつ杉バンドのメンバーを紹介して行く。薫ちゃんたちも加わってステージに入り切らないほどたくさんのメンバーがステージに上がる。窮屈そうだけど、みんなにこにこ。この人達のにこにこが杉さんの音楽を支えているんだなぁ。「もう少しでアルバムが出来ます。ホントに大自信作で、代表作になると自負してるので聴いてね〜」と言って「太陽が知っている」を。やっぱりこの曲が杉さんなんだな。

♪愛し合って夢を分け合って許し合ってそれでダメなら 微笑んでみよう明日の行く先だったら太陽が知ってる♪

「どうもありがとー!」会場からは本当に数え切れないほどのクラッカーが鳴らされる。からまって杉さんが動けなくなるほど。アンコールの声はやまない。辺りを見まわすとみんな頬が高潮している。「h」がいっぱい降り注いでいる。会場には杉さんの好きなビートマスが流れている。それに合わせて拍手はやまない。

 「どうもホントにありがとう!」杉さんが登場するとまたクラッカーが鳴らされる。ソロのメンバーが再び登場する。「結構いっぱいやったでしょ?」本当にたくさんやってくれた。もう本当に思い残す事はないくらい。「じゃ、『Backstage Dreamer』!」ピアノのイントロが流れる。うれしくて、そして楽しくて。見てる側もステージの上もその気持ちが一つになってにこにこが一杯に広がって行く。いつまでも夢見ていて欲しい。そして階段を昇るように有名になって欲しい。

「どうもありがとー!またねー!」会場から声がかかると大きな投げキスを送ってくれる。素敵な素敵な夜。20世紀最後の、そしてきっとずっと忘れられない夜が静かに幕を閉じた。

 Thanks to My Soulmates
& Masamichi Sugi Band